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大韓民国演劇祭in大邱 レポート①

藤井颯太郎

Profile

藤井颯太郎

幻灯劇場 代表

2017年6月2日~20日にかけて大邱広域市で開催された「第2回大韓民国演劇祭in大邱」に,東アジア文化都市2017の交流プログラムとして参加した劇団の代表者のレポートです。

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言葉が通じないお客さんの前で演劇をする

 先日、第2回大韓民国演劇祭へ招致していただき、『56db』という新作を上演させていただいた。
お話を頂いたとき、まず言葉の壁を思い浮かべたと思う。 字幕を通して理解してもらおうとすると、生身の俳優から発信される情報を観客は見逃しやすい。

「言語以外の情報で如何に空間を共有し、交流するか?」という所から『56db』の稽古は始まった。僕は作家だから言葉を信じている。でも、向こうで僕らの言葉は信用できない。言葉が分裂したバベルの塔の混乱の中に演劇を持ち込むような、不安な気持ちで一杯だった。
まず、「56dB以上の音がなると天井から箱が落ちてきて俳優に直撃する」というルールを作り、その中で作品を作ることにした。世界中のどこに行っても、人間生きてりゃ長時間じっとしていられないし、呼吸もする。生きている人間は音から逃げることができない。

映像作家の月原康智(株式会社ジョッガ)に依頼し、「45分間の音(dB)を可視化し、その記録を取り、その日のその客席と出演者しか見ることができない映像作品」を製作してもらった。僕らが過ごした時間を、音の角度から共有しようという狙いだ。
出演者に俳優は勿論、コンテンポラリーダンサーやストリートダンサー(如何にも音を出しそうだ)、さらにはエレキギタリスト(ほうっておいても勝手に56dbを超える)など、特にうるさそうな7人を選んだ。

字幕は物語の理解の補助のために使うのではなく、役者が喋っていないシーンでも字幕に喋らせ客席をミスリードしたり、キャラクターの言葉と裏腹な内面を語らせたり、第三の立場として語らせたり、出演者の一人として利用した。

韓国に文化交流のために滞在した数日間の間に、文化交流というのはこういうことかもしれないと実感する出来事があった。

劇中で「あの子の魂と駆け込み乗車することばかり、祈るしかない」という字幕だけが表示されるシーンがあった。韓国語に翻訳されたこの文章では、「駆け込み乗車」という言葉が「自分の命を絶つ」というニュアンスを持つ言葉に訳されていた。
韓国での千秋楽前日、その字幕に関して、韓国の作家より面白いアイディアをいただいた。有難く頂戴することにし、すぐに韓国の学生に朗読してもらいそれを録音し、各部署へ調節を依頼して、千秋楽にはその案を実現できた。音響やギタリスト、プログラマーは眠れない夜を送ったが、字幕が作品全体を引っ張っていくシーンが生まれた。

本来の字幕の役割を否定することから始まったこの作品が、字幕の新たな使い方に行きつき、千秋楽を迎えた。韓国の作家や学生翻訳家と話さなければこのようなシーンは生まれなかった。

ダンサー、ギタリスト、俳優、字幕、映像がそれぞれの交流の仕方で、異国の観客と空間を共有した。全てが正確に伝わったわけではないだろうが、終演後の客席の熱気や拍手喝采に、僕らはかなりの手ごたえを覚えた。
上演が終わり、僕は汗だくのまま劇場のホワイエに座っていた。劇場前の広場では大道芸人がパフォーマンスをしている。それを見ていたお客さん二人が僕を見つけてホワイエに入ってきた。感想を伝えにきてくれたのだ。手放しに褒めていただいた。他にも、言葉は通じないものの劇場の喫茶店の珈琲をその場の劇団員全員に奢ってくださったり、お手洗いでお客さんに出会った女優が差し入れをいただいているのを見て、僕らの作品が受け入れられていると実感した。
汗だくの僕に二人のお客さんが「次はいつ来るの? 次回作が楽しみ。来年?」と(たぶん)聞いてきた。こんな貴重な機会、来年はないかもしれない。

今回の上演で『文化交流』が出来たのかと問われると「いいえ」だと僕は思う。もっと長い長い時間をかけて、韓国の俳優や作家と同じ稽古場でぶつかり合い、文化を破壊しながら作品を作っていくことが、文化をまぜこぜにして刺激し合う『文化交流』だと思えたからだ。その始まりの機会を頂いた。この作品は名古屋公演と京都公演へ持っていくことになっている。日本のあちらこちらでも長い時間をかけ文化をまぜこぜにしていきたい。

大韓民国演劇祭in大邱(学生演劇の交流)

関連イベント情報

国際

201706/02 - 06/20

第2回大韓民国演劇祭in大邱

「東アジア文化都市2017」大邱での交流事業として,全国学生演劇祭出演の劇団による公演と大邱の学生との交流を図ります。

<出演する劇団>

・ 劇団西一風(立命館大学) 第2回全国学生演劇祭審査員賞受賞
 [上演作品] PINTPH™
・ 幻灯劇場(立命館大学) 第2回全国学生演劇祭観客投票2位
 [上演作品] 56db ゴジュウロクデシベル
・ 劇団なかゆび(同志社大学) 第2回全国学生演劇祭審査員賞受賞
 [上演作品] 断絶の詩人(the poet of disruption)

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